舌神経麻痺(ぜつしんけいまひ)
舌神経麻痺とは
舌神経を損傷し、舌の前2/3の知覚・味覚の脱失もしくは低下が起きた状態のことを言います。
舌神経麻痺の原因
舌神経は三叉神経の第Ⅲ枝である下顎神経の枝です。
舌神経は顔面神経の枝である鼓索神経と途 中から一緒に走行し、舌まで伸びています。
よって末梢部では両方の神経をまとめて舌神経と呼 び、それらの神経は舌前2/3の知覚(触覚、痛覚、温覚、冷覚)と味覚を支配しています。
舌神経は下顎を通り、舌に伸びているのですが、下顎孔の伝達麻酔や親知らずの抜歯時に舌神経を 損傷して舌神経麻痺になることがまれにあります。
Mason1)は親知らずの抜歯後に1040症例中120症例(11.5%)が舌神経の異常感覚を訴え、その内6症例は術後6ヶ月経過後も消失しなかったと報告しています。
それ以外にも頭蓋内疾患や、ウイルス性疾患 によっても起こるようですが、以下は伝達麻酔や、親知らずの抜歯等により舌神経を損傷した場 合のことについて記述いたします。
舌神経麻痺の症状
舌神経麻痺の症状は、舌の前2/3の知覚の脱失、もしくは知覚の低下です。
例えば、触られて いる感覚が分かりにくい、痛みを感じにくい、麻酔がかかっている感じがする、熱いものを口に 含んでも熱いと思わない、ビリビリ、ピリピリなど変な感じがする、しゃべりにくい、舌が重い などの表現をなさいます。
そして中には、味が分からない、もしくは味が分かりにくいというよ うな方もいらっしゃいます。
舌神経麻痺の治療
舌神経の完全断裂もしくは部分的神経断裂の場合は神経縫合などの外科的処置が施されます。
そ の他には薬物療法、星状神経節ブロック、レーザー照射、温罨法(温め)などが行われます。完全回復するのはなかなか難しいといわれています。
通常、日常生活に不自由のない状態を目指して治療が 行われます。
舌神経麻痺の当院での治療
当院では舌神経麻痺の患者様に鍼灸を行っております。
施術時、安全面はもちろん衛生面を 考慮し、手袋、口腔内用の消毒液、ディスポーザブル鍼(使い捨ての鍼)を使用し、口腔顔面部 の施術にあたっております。
舌神経麻痺の中でも、星状神経節ブロック後、まだなお残る知覚麻痺に対 して鍼施術と低出力レーザーを行っております。
その他上記の治療を病院にて行いながら、それと並行して鍼施術を行っている方、上記治療を希望されず、鍼施術とレーザー照射だけを行っている方等がいらっしゃいます。
鍼施術は損傷した神経の賦活を目的に行います。損傷部位の周囲の血流を促し、浮腫を改善して いきます。
病院にて治療中の患者様は担当のお医者様に鍼灸施術を受ける旨、確認の上ご来院く ださいませ。
患者様の声
左下の親知らずを抜いて左半分の舌が麻痺し、舌神経縫合術をした患者様からうれしい報 告をいただきました。
手術から2年半後、はり施術の初診時、触覚・痛覚が全くわかりませんでしたが、10回のはり 施術後、触覚・痛覚が少しずつ分かるようになり、味もわかるようになりました。
参考文献・引用文献
1)Mason,D.A.Lingual nerve damage following lower third molar surgery.Int J Oral Maxillofac Surg 17:290-294 1988
2)歯科治療による下歯槽神経・舌神経損傷の診断とその治療
に関するガイドライン
日本歯科麻酔学会 日本口腔顔面痛学会 日本口腔外科学会 日本ペインクリニック学会 口腔顔面神経機能学会